シンシアリー
「ここだけの話にしていただきたいんですけど・・」
「もちろんよ、クランマーさん。どうぞ話を続けて」
「ええ。実は・・・公子様が女中たちにその・・手を出しまして」
「手、ってまさか・・ヘルメースが暴力を振るったと?」
「まぁ、そういうことだと思います。私たちもその場を目撃したことはなくて、辞めた女中の一人がそう漏らしただけで・・。とにかく、いち早く事態を察した公妃様が“このことはわたくしに任せなさい”と仰いまして。それ以来、その騒ぎはピタリと収まったんですよ」
「今の公妃様のことは、正直言ってあまり好きじゃないけどね――ほら、あの方は私ら労働者のことを人として見てないからさ――それでも、あの騒ぎを静めてくれたことは感謝してますよ」
「それだって、自分の息子が関係していたから乗り出してきただけでしょう?」
「まぁそうだけどさ」
「そんなことがあったの・・・」
「だから、姫様が公子様にひどい目に遭わされたとユーグから聞いて、私は“あぁやっぱり”と納得してしまいましたよ」と女中の一人が漏らすと、他の召使たちも皆、一様に頷いた。

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