シンシアリー
可哀想な姫様
東西南北の四方が小高い山に囲まれているアンドゥーラ公国は、いわゆるミニ国家である。
その君主であるゼノス・ザッハルト大公と、彼の妻・カサンドラ妃の間に、待望の第一子が誕生した。

新たな命がこの世に誕生すれば、誰だって喜ぶはずである。
しかしゼノス大公は、生まれた我が子が女子であったという事実に驚愕し、打ちのめされていた。
人の性別は男と女の二種類しかない。
だから生まれてくる赤ん坊が女子である確率も、50パーセントはあったはず。それなのに、ゼノスはもちろん、国中の誰もが、大公の第一子は男子であると信じきっていた。

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