闇に紛れた帝王
始まり
『……大丈夫……きっと大丈夫……』



どうしてこんな事を思えたんだろう。



私には、大丈夫なんて言えるような根拠は何処にも無かったのに……。
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『コホン……という事になっている。何か意見は無いか。無ければこの作戦で決まりだが。』

賛同する皆を見る。

『では決まりだ。一ヶ月後、この作戦を行う。解散だ。』

執事「次のお仕事です。孤児院で虐待が行われているという証言を得ましたので、偵察を。そちらにお向かいください。お供としてレオを付けております。朔夜孤児院です。車を下に用意しております。それでは失礼致します。」

義務的な専属執事の声を聞いて息を吐く。耳につけているものを外したいぐらいだがそれは立場上出来ないため深いため息をつく。

私は修羅佐貊ーしゅらさはくー。帝王だ。帝王というのは世界の頂点を意味し、一人しかいない。軍長とも呼ばれている。西暦350万年。戦争の世の中で16年間生き延びてきた。

一応、女だ。帝王が女だと言うことは異例であり、16の少女である私は、意外と凄い。


私の生まれは孤児院だった。


魔法力で最高ランク、Aだと5歳の頃決められてから、血の滲むような努力をし、最高峰の座を勝ち取った。

『こんなはずじゃなかったんだがな……。』

そう.自由が私は欲しかったのだ。仕事にとりつかれるような職などしたくはなかったのだが。

ガタンッ


不機嫌さを丸出しにして車に乗り込むと、部下のレオがビクッととびはねた。こいつは嫌いだ。本当に……嫌いなのだ。こいつは。
力を笑って誤魔化すこいつ。努力などせず、私の部下という地位を取った。全ては権力で。

レオ「ご、ごきげんどうですか?」

20歳のこいつ。


こいつが許せない。血の滲むような努力をし続けてきたやつらがこいつに勝ち取られるなど。

『さぁな。』

レオ「今日のことは聞いておられますか?」

『私を誰だと?』

レオ「誇り高き帝王様です。」

はぁ……

『お前は何もわかっていないな。』

こいつには、
人間
だといってほしかったのだが。……叶うわけないか。

レオ「申しわけありません……」

『もういい。車を出せ。私1人で全て終わらせる。そこら辺でコーヒーでも飲んでおくことだな。』

ガタンッ

私は車を出て朔夜孤児院の前に立つ。

今の私の服は、普通の子供の服だ。

『あのぉ~』

車を走らせたあと、そんな甘ったるい声をかける。

園長「どうしたんだい?」

気持ち悪い笑顔を浮かべ私の方に歩いてくる園長。遊具などには、誰ひとりいない。

『あのっお母さんにここにいて園長さんに話しかけなさいって言ったのっ。貴方は園長さん?』

園長「そうだよ?さぁおいで。寒かったろう?君にはお友達が待っているからね。お名前は?」

『ハルクっ。』

園長「さぁおいで、ハルク……。」

連れてこられたのは血の匂いがする地下室。そこには何人もの子供たちがいた。
皆、傷だらけだ。

『ここどこ……?』

園長「お前の家だ。入れ。」

全て、録音済みなのを知らないこいつは低い声を出して言う。

『きゃぁっ』

園長「また来る。」

ガチャンッギィィィィッ

固く閉ざされた扉。ここには魔力封じがされていないのか。

私はそのまま立って辺りを見回した。

倒れる者。泣き叫ぶ者。そんな者は1人も居ない。誰もが怯えながら私を見る。

『おい。』

盗聴器が何も無いことに少し驚きながら隅にいる少年に声をかける。

?「僕……?」

『ここで何されてる。』

おそらく15か。

?「あはは……殴られたり……蹴られたり……。君もそうなるよ……。ほら、あそこの女の子……もうすぐ死んじゃう……。いずれ僕達もそうなるよ……。」

倒れ込んでいる少女。……酷いな。

あの男が後、3時間来ないことを知っている私は魔法で檻の外に出た。

?「えっ……?!」

皆が驚きで顔を上げた。

『我は貊。神の子にし、神である。帝王として、彼女を癒す事を命じる。ユラン、治せ。』

ユラン「もぅっ!扱いが酷いんだからぁ……。癒せ、癒せ、傷を、癒せっ!」

シュゥ……一瞬で消えた彼女の傷。ユランは癒しの精霊。私と契約した天使の1人。
ふん。

?「君はっ……?」

『私は修羅佐貊。帝王だ。お前達を救いに来た。』

シャランッ

一瞬で変わった風景。ここは、私の城だ。

執事「お見事です、貊様。」
『癒しておけ。』

バンッッッッ!!!!!!!

私は帝王特有の服に着替えて園長がいる部屋を蹴破る。

『我は帝王。何を言われているか分かるな?ミヨ。帝王の名の元に、悪者を縛れ。』

ミヨ「おっけー」

はぁ……

『孤児院に居る子供達は一旦私の部屋に連れた。行くぞ。』

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子供達編〜

ミク『大きい......』

ハナ「ここお城だよね...?」

ユン「お偉いさんなのかな?」

アオイ「帝王って言ってたよ。帝王は...この城の主だ。」

ミク「怖いよ...」

アオイ「大丈夫。きっと、助けてくれるよ。」
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『はぁ...』

レオ「お見事です、帝王様。」

『どうしてここにいる。』

休憩所で子供達を待っているとレオが現れた。

レオ「お供としてここにきたのに、帝王様のお役に立てなくて...」

『どうでもいい。お前に初めから何も望んでいない。』

レオ「...っ自分はっ」

『黙れ。耳触りだ。お前は何もしなくていい。邪魔だ。』

レオ「...失礼致します。」

その声と同時に子供たちが入ってきた。

ユン「うわぁ...おっきいなぁ...」

ハナ「あ、さっきの子だよ...!」

ミク「...ほんとだね。」

アオイ「ハナ、指ささないでね。

...帝王、だとお聞きしました。それは、本当ですか?」

アオイという少年が私を訝しそうに見てくる。

私より歳上だろうか。

『あぁ。私の名は修羅佐貊。この世界の帝王だ。適当に呼んでくれればいい。ここで3日間過ごしなさい。お前達に必要な場所を提供する。物は漁らないように。』

ハナ「必要な場所...ですか?」

『お前達を必要とする居場所を見つけて送り出してやる。もしくは、ここに住むか。お前達が決めろ。』


執事ザザッ「貊様?!困りますっ」

その声を無視して見つめる。


アオイ「帝王様のお城に、我々孤児が居座ってもいいと?」

『あぁ。』

魔法を使い執事に別の会話をしていると思わせ、話し始める。

『私も孤児だ。』

その言葉にひどく衝撃を受けただろう。世の中の頂点が孤児なのだから。

ミク「...帝王が、孤児...?」

『あぁ、そうだ。孤児が、おまえ達の生死を左右する。おかしな話だと思うだろう?』


ユン「おかしい...けど、おかしくないもんっ」

...久しぶりにタメにされたな。

『ほう。そうだ。孤児だからなんだ。そんな事実は肩書きにもならない。
孤児だから差別を受ける必要は無い。お前達は家族がいる家庭の人間と何ら変わりない。』

アオイ「...僕達は..差別されなくて……いいのですか……?」

『そうだ。どうする。お前達はここに残って私の部下になるか、孤児院にもう1度入り自らの両親を探すのか。

ここに入れば、簡単に外をうろつくことはできなくなる。厳しい訓練を受け、私に仕えなければならない。

この二択だ。お前達が決めるといい。』


ミク「……私は…、帝王に仕えたい。」

……強い子だな。

アオイ「僕も、救ってくれた帝王様に、仕えたい。」

アオイが言った後、僕も、私も。そういうように孤児院にいる子供達全員が居残る事を決めた。


『分かった。お前達の部屋は下働きの部屋だ。おかしな真似はしないように。そこのメイドに連れて行ってもらうといい。

アオイ、お前は私の元に残りなさい。』

そういうとアオイは驚いたように私を見た。


『私の横についてみるか。』

誰もいなくなった部屋で、アオイにそう言った。

アオイ「ぼ、僕がですか?!?!」

信じられないと言うようにアオイが驚きの声を上げた。

『お前を隣におきたいと思った。右腕として。……この提案を無視する事も可能だ。私の右腕になるには何年という歳月をかけなければならない。』

なぜ……とでもいうような顔をしているアオイにそう伝えてやると、目を見開いてうろたえた。

アオイ「僕に……そのような大役が務まるでしょうか……。」

『それはお前の努力次第だ。』

アオイ「……是非、やらせてください!帝王様の右腕になれるように努力しますっ!!」

『そうか……。では、専属執事に頼むとしよう。聞いているな?入れ。』


ギィィィッ
執事「……かしこまりました。では、アオイ、こちらに来なさい。」

呆れたような顔を私に向けながらアオイにそう伝えた。

言っても聞かないことを、知っているから何も言わないのだろう。

アオイ「はいっ!」

元気な返事をしたアオイは、姿としてはまだ小学生ほど。華奢な体で小走りに走るアオイを見ると、どれほど悲痛だったかが伺える。

執事「失礼いたしました。」

ガチャンッ

扉が閉められた。
……さぁ、アオイ、お前はどれほど力をつけてくるだろう……?


クククッ……

大きな部屋に、私の押し殺す笑い声が響いた----。
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