闇に紛れた帝王
理事長
威圧する大きな門の前に、私達は居た。
午前8時。

我が国が誇る学園が、目の前にあった。


アオイは緊張しているのか、冷や汗を垂らしている。

『緊張しなくていい。

"ここでの私の名は桜庭華だ。敬語もやめ、同級生のような接し方をしろ。"』

テレパシーでそう伝えると、コクリと頷いた。

?「あれれ〜?編入生ちゃん達がいるー!」



私の姿は無公表なので、そのままの姿で来た。バレることはない。

魔力も持つと魔力が消えると言われる貴重な無石をいくつも身にまとい、抑えきれなかった魔力は自らの力で制御した。


スタッ
何mもある門から降りてきた案内役と思われる人間に、一礼した。

『編入生の桜庭華だ。
後ろにいるのは同じく編入生の桜庭アオイ。』

?「そーなんだー!美男美女だね♪
僕は案内役の郷戸千里(ごうどせんり)っ、生徒会書記のSクラス2年生だよっ♪よろしくねん♪じゃー行きますかー!」

ギィィィィィィィィィィィィィッッッッ


大きな音を立てて開いた門。

ここには何があるのだろうか。

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校内を歩いているが、誰ともすれ違わない。……今は授業の時間なのだろうか。

千里「それでねそれでねっ……」

ずっと話している千里は、見た所かなりの上級者。いわゆる天才と呼ばれるべき人間だろう。

千里「あっここだよー!」

キラキラとした目で私達を笑って見る千里の後ろに書いてあるのは、理事長室と呼ばれる場所。

この学園を仕切る人間。

千里「失礼いたします、理事長。」

ギィィィッ
開けられたドアの向こうは重厚な部屋で、何故か真っ暗だった。

千里「ここからは自分達で入ってね♪それじゃっまた会おーねっ♪」



ガチャンッ
ドアが閉められた。

…魔獣が…来る。

『アオイ、待て。』

行こうとしたアオイに静止の声を聞かせた。

『我望む者。明かりを灯したまえ。』

急に視界が明るくなると、目の前に魔獣が居た。

これは試験か?


『魔獣……。』

闇の森の魔獣だということは一目で分かった。普段は人間を襲う凶暴な魔獣ではない。

目は虚ろで、命令された通りに動くロボットのようだ。

『温厚なる魔獣よ。目を覚まし我に返りたまえ。』

これは魔法を解除するもの。……普段は滅多に使われることはない。

虚ろな目が確かな物に代わり、魔獣が私達二人をしっかりと見据えた。


"ここはどこですか。"

大きな魔獣が唸りをあげた。

『ここは人間が住む場所だ。闇の森ではない。なぜお前がここにいる。』

"連れてこられたのです。"


やはり、これは試験か。そのために魔獣は殺されているのか。なんとむごい。

『なんとむごいことを……。お前は試験の為に殺されるというのか。』

"我は殺されてしまうのですか。"

全てを諦めたかのような顔になった魔獣は、目から光が消えた。

生きることを諦めたのか?

『なぜお前の目から光が消えたのだ。』

"……父も、母も、妻も、息子も娘も、親戚の人間も何人か、殺されているのです。……なんとか生きながらえてきたのですが……我も同じ道を辿るとは……"

魔獣は元より賢い。知性のあるものだった。

『……ここ何年も一定の魔獣達が殺されていたわけはそのようなものだったか。

お前が同じ道を辿ることはない。安心しなさい。送り返してあげよう。』


"……もういっそ、この場で殺してください。家族の元へ、行きたいのです。"

1粒の涙が、魔獣の目からつたった。

……悲しき者だ。

『生きることを諦めるな。家族や仲間を愛しているのなら、生き長らえろ。
それが報いとなろう。お前が、家族や仲間達の分まで生きるのだ。』


"……人間は、魔獣を嫌う者ばかりだと思っていました。貴方のような人間に会ったのは、初めてだ。"

……それは、私が帝王だからだとは、言えない。
違う姿でも、同じ魂を宿す者達を、私は殺すことはしない。


『そうか。アオイ、お前もするか。』

アオイ「うん。」

私とアオイは魔獣を囲い地に手を下ろした。


『我神の子』

アオイ「戻るべきその場所へ」

『帰るべきその場所へ』

アオイ「返したまえ」

『薄情なる人間の非道を』

アオイ「葬るとともに。」

ス……

魔獣の姿が、足元から段々と消えていく。

魔獣「貴方方に出会えてよかった。
このご恩は忘れはしません。ありがとうございました。」

微笑んだ魔獣を見送った。


パチパチパチパチッ

理事長「高度魔法を使えるとは大したものだね。君達は試験に合格した。ようこそ、セロシピア学園へ!」

瞬間、場所が変わり、理事長室らしい室内が現れた。

『よろしくおねがいします。』
アオイ「……よろしく……おねがいします。」

理事長「まさか1年生で上級魔獣を闇の森へ返せるなんて天才としか言いようがないね!」

『まだまだ未熟者です。』

理事長「ははっ、それで未熟かい?いいね、君達2人にはとても興味がある。Sクラスへご案内しよう!」


……Sクラス。最高クラスか。

?「失礼します。」

眼鏡をかけた教師が出てきた。
……担任か。

理事長「あぁ昂(すばる)君!聞いてくれ!この子達は天才だよ!前例が無いことをやってのけたんだ!素晴らしい!」

……は、思ってもいないことをよく言う。

アオイ「ですってっ」

……アオイは舞い上がっている。
これが狙いか?

『いえ、あの程度Sクラスの人間なら当たり前でしょう。天才でもなんでもありませんよ。』

あの程度で天才ならば、私はどうなる?
バケモノか。

?「ほう……さすがですね。では、失礼します。」

理事長「うむ!君達には大いに期待しているよ!!」

魔獣を扱うのは禁止しないとな。
そんな事を思いながら、理事長室を出た。

?「で、俺の名前は昂。昂先生って呼んでくれたらいいわ。お前たち何やったの、理事長めっちゃ舞い上がってたよあれ。」


『当たり前の事をしたまでです。』

昂「へぇ。二人共兄弟なんだって?似てないね?」

『そう言われても兄弟なので仕方ないですね。』

昂「ふーん。あ、ここー。Sクラスは天才しかいない場所。せいぜい頑張れー。」


早くも指摘すべき点が出たことに驚きだが……、この学園に、何があるのだろう。


不安と期待に胸を踊らせる私は、窓から見える世界に共通する青い空を見上げた。
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