ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
(えっ?)

澄ました態度にカチンと来たけど、グッと堪えて囁き声で話し掛けた。

「何がって、だってあそこに立ってるのは一緒にいた彼女でしょう?」

言い返すと、所長がポンッと僕の肩に手を置いて顔を耳に寄せてきた。

「黙って見ててよ」

とニッと笑みを浮かべた所長が、自信タップリに胸を張って台座の方へと歩み寄って行くじゃないか。

(ゴマかし通す気ですか?)

よくそんな無茶なマネしますね。と、所長が何食わぬ顔で台の上へと上がり、真正面から彼女の瞳を覗き込んだ。

「セーフモードで再起動」

と顔を近づけたまま所長が呼び掛けると、聞いた彼女がピクンと動いた。

「はい、セーフモードで再起動ですね」

と正面の所長を真っ直ぐ見据えたまま声を返す彼女。一体何を演じてるんだ?

「YES」

答える所長。と、彼女が微笑みを浮かべたままじっと動かなくなった。

「よし」

と頷いた所長が横を向き、脇のパソコンの前に座っていたメガネの研究員からケーブルを受け取って、躊躇する事無く彼女の耳にグイッと差し込んだ。

(ワッ…)

耳にケーブルを挿された姿はあまりに痛々しい。と、所長がこっちを振り向いてニコヤカに声を上げた。

「どうぞパソコンの画面をご覧下さい」

と、笑顔の所長に誘われるようにお偉方がパソコンを取り囲んで人垣を作った。僕もその後ろに並んで隙間からパソコンの画面を覗いた。

「ライブの映像を出します」

とメガネの研究員がキーボードを叩くと、画面に、パソコンを覗き込む僕たちを台座から見た姿が映った!

(あれっ?これって彼女の目の映像?)

僕が動くと画面に映った僕の姿も動く!

(まさか!)

彼女はホントにっ!
< 10 / 324 >

この作品をシェア

pagetop