ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「過去の映像もご覧いただけます。今朝からの分を出します」

とメガネの研究員がキーボードを叩いた。と画面に、今朝の教授室でのやり取りが映った。

「えっ!」

明らかに彼女の目から見た教授と所長と僕の姿。こんなの人間業では考えられない!

(ホントにロボットだったのか、彼女!)

信じられない。

「どうぞどうぞ、この子にもっと近づいてご覧下さい」

と所長の声を聞いてすぐ、台の上の彼女に寄った。とスポットライトがもう一つパッと照らされ、交わるライトの真白い光の中に、背筋のピンと伸びた美しい姿勢の彼女がクッキリと浮かび上がった。

(どう見ても人間だよこれ)

ロボットというレベルを遥かに上回る出来の彼女。こんなの今まで見たことがない。吸い込まれる様に顔を真正面からまじまじと見つめた。

(ここまで作れるのか…)

やわらかな曲線の頬、キュッと締まった口角、ツンと尖った鼻先、スッとラインを描く眉、パッチリと生え揃った睫毛。整った顔立ちはとても綺麗だ。

「ウム、良い出来栄えだな。いいだろう、この調子で続けてくれたまえ」

とお偉方が所長の肩をポンと叩いて踵を返し、お抱えを引き連れてゾロゾロと引き揚げて行った。

「ほらね。言った通りだろ?」

と満面の笑みで話しかけてくる所長。確かにスゴイですよ、彼女がロボットだったなんて。

(…ん?)

ちょっと待って下さいよ?確か明日から、僕の所に手伝いに来るって、

「まさか、このロボットが手伝いに来るんですか?」

そんな無茶な!

(話が違うじゃないですか!)

人間そっくりなロボットなんて、オタクな話に僕まで巻き込む気ですか?

「何でロボットの彼女をわざわざ僕の所へ寄こすんですか!勘弁してくださいよ!」

データが欲しいなら、そんな事しなくたって幾らでも分けてあげますよっ!と、所長が両手を広げて僕を抑えてきた。

「まあまあ、」

とニッと笑みをこぼす所長。

「そもそも最初はね、」

と、所長がじっと僕を見ながら続けた。
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