ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「教授はこうも言ってたよ。彼女にはこの子の正体を予め話しておく必要は無い。聞かれた時に初めて答えればいい。この子がロボットだと言われた時、彼女がそれを信じるのか信じないのか、信じた時はどうなるのか、それも含めて全て君の観察対象という訳だ、ってね」

「教授がそんな事を…」

確かに観察としては面白そうだけど。これはまた面倒臭い事になりそうだナ…。

「こんなに人間そっくりなロボットがいると世間一般に広く公表された後では、もう二度と同じ状況での観察実験は出来ない。一生に一度、いや、人類史上、たった一度しか出来るチャンスの無い貴重な観察実験となる訳だ、って、君の教授が言ってたよ」

「確かに、そうですね」

彼女がロボットだと知ってからではもう出来ない実験だ。いつもロクな事を言わない教授だけど、さすがに今回ばかりは一理あるかも。

「あっ、それとね、」

と、思い出したように所長が続けた。

「もう一つ付け加える条件があるんだよ」

条件?

「何ですか条件って?」

聞き返すと、所長が微笑んで返してきた。

「君の研究室以外には、この子がロボットだって事は決してバレないようにして欲しいんだ」

と顔を寄せてくる所長。

「えっ、どうしてですか?」

聞き返すと、所長が真面目顔で返してきた。

「最終の耐久試験が終わるまでは表立って公表出来る状態じゃない。これで大丈夫って確証を持って発表する前に勝手に騒ぎになると困るしさ、」

と所長がニッと口元を緩めて、さらに続けてきた。

「こういう事は最後まで隠しといて、突然格好よく発表して世間をアッと言わせたいんだ。これは開発者の密かな喜びってヤツかな」

と微笑み掛けてくる所長。ま、その気持ちは分からないでもないですけど。

「それとね…」

とパッと目を逸らす所長。
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