ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
(男だと思ってないのか?)

そっちはそうでも、こっちは意識しちゃうよ。ミライと違って生身の女なんだし。

(それとも、ホンキで誘う気か?)

…いやいや。

(考え過ぎだ考え過ぎ)

マッタク、余計な気遣いさせないでくれよ。お酒が入ってくってのに、変な気を起こさないようにするのは大変だ。

「さ、食べよ先生」

と平然とピザの箱を開ける広海君をなるべく見ないようにして、味わうのもそこそこにピザを平らげた。

「よかった先生が来てくれて。ルミちゃんもヨッシーもみんな実家に帰っちゃったでしょ、一人で晩ご飯食べるの寂しくって」

って広海君、誰でも良かったって事?

「でもちがうのよ、誰でも良かったって訳じゃないからね、先生」

と、僕の気持ちを見抜いたかのように、急に真面目に見つめてきた。

「ねぇ、いつか教授が言ったこと覚えてる?二人はお似合いだと思うって」

あ~っ、そうそう、控え室で教授が院生たちと一緒になってけしかけて来たんだっけ。

「私もね、先生といると居心地がいいって感じるの」

と照れたように微笑む広海君。

(フーッ)

僕が、どれだけ気を遣って君に合わせてきたと思ってるんだい。

(そう感じて当然だよ)

でも、それは君を好きだからって訳じゃ。

「わかってる。先生にとっては私なんか、手の掛かるワガママな女だって」

ホントに心を見透かしてるんじゃないのかって思うほど、僕の気持ちを先取った言葉が出てくるナ。
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