ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「でもこんなに長く一緒にいて、居心地の良かった人って先生が初めてなの。ねぇ、これって先生と学生って関係だからだけ?ただそれだけ?ねぇどう思う?」

え、いや、どうなんだろう。

(君にとっては相性がいいんだろうけど)

と、広海君がテーブルに手をついてグイッと身を乗り出してきた。

「ホントに私たちお似合いなのかもって、最近思うのよね。だってこんなに居心地いいんだし」

って、それは君だけじゃないか?

「私だけじゃない。先生だって。もっとずっと一緒に居てくれたらわかるはず。一日中ずっと、ね…」

と体をクネらせて上目遣いで見つめてきた。ワッ、誘って来てる誘って来てるよ!

(ど、どうする!)

理性と本能の葛藤。ほんの僅かな、凄く深く長く感じる時間。

「…いいの。私焦るつもりないから」

と、パッと身を翻された。あ、あれっ?

(そ、そうくるのか)

ホッとするのと同じぐらい、シマッタって気持ちが。

「先生がそんな軽い人なら、もうとっくにミライさんとイイ仲になってるハズだもんね」

とニッコリ笑って、ビールを口に運ぶ広海君。

「そうだね」

即答して返す。動揺を悟られないように。

「さ、センセー飲みましょ。まだあと2パックあるから♪」

と僕のビール缶に乾杯をして嬉しそうにビールを口にする広海君。

(…もったいなかったかな)

後ろ髪を引かれる思いを吹っ切るように、ビールを口へと運びつづけた。
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