ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 じっくり広海君と話を交わしたクワンが、満足した様子で無音室から出てきた。

「せっかくの学園祭だから、外の出店も見て回りたいわ。案内してもらえると助かるんだけど、どうかしら?」

と僕を見るクワン。その肩越しに広海君の姿が見える。瞬間、頭の中に眉をピクつかせる広海君の顔がチラッと浮かんだ。

「いや、僕はここに残るよ。一応責任者がここに残っておかないとね。だから広海君、代わりに一緒に行ってこないか。行きたがってたろ」

ここで労わっておかないと後が怖いゾ。

「…ううん、いいわ」

と意外にも、広海君が首を振って続けて返してきた。

「よそ者の私より、先生が一緒に行った方が話も弾むでしょ。先生がミライさんも連れて一緒に行ってきた方がいいんじゃない?ここには私が残っていてあげるから」

と微笑む広海君。どうした事だろう。

「いいのか?」

いつになく物わかりがいいのが何気に怖いんだけど。

「その方がお互い気を使わなくていいでしょ。だから先生、一緒に見て回って楽しんできてよ、ね」

と笑みを押し出してくる広海君。

「…じゃあ、そこまで言うなら」

せっかくの広海君の心遣いだ。無駄にしてはもったいない。僕はミライとクワン達を引き連れて、校舎の外へと出た。
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