ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 昼休みを告げるチャイムが鳴る。

(…早く打ち明けとけばよかったんだよ)

せめて試験の採点の時に正直に話しておけば、と実験室でぼ~っと後悔していると、不意に内線電話がプルルーッと鳴った。ディスプレイの番号を確かめながら受話器を取ると、教授が出た。

「あー、私だ。今こっちに広海君が戻って来ているがー」

えっ!

「ホントですか?」

良かった、戻って来てくれたんだ!

「今、控え室でみんなと話している。君もこっちに、」

「すぐ行きますっ」

と教授の話の途中で答えて受話器を置き、実験室を飛び出した。
< 202 / 324 >

この作品をシェア

pagetop