ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 後からついてきたミライと一緒に、控え室の扉をバタンと開けた。

「あ、先生、ミライさん」

と、向かい合って並んだ机の左右にルミちゃんとヨッシーが立っているだけで、広海君の姿がそこに無い。

「あれ?広海君は?」

彼女は一体どこへ?

「遅いよ先生。たった今出て行ったわよ」

ええっ!

「出て行った?どこへ?」

戻って来て、もう?

「知らな~い。鞄を取りに来ただけみたいだったよ」

鞄を取りに来ただけって…。

「じゃあ、まだ怒ってるのか」

「…仕方ないわね」

とミライと顔を見合わせた。そりゃそうだよな、あれだけの啖呵を切って出て行ったんだもんな。と、ルミちゃんが眉間をグッと顰めた。

「なんか、辞めるみたいな話、教授としてたけど」

ええっ!

「なんだってぇ?」

慌てて振り返って、教授室への扉を開けて中へ飛び込んだ。

「ホントですか教授、広海君が辞めるって!」

と、横を向いて腰掛けていた教授がクルッと椅子ごと振り向いて、僕に向かって顎を上げた。

「さあな。もう君の実験は手伝わない、みたいな事を言って、私が聞き返す間もなく出て行ったよ」

とジッと見つめてくる教授。
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