ふたりの彼女と、この出来事。（旧版）
「そんな、」

そんなバカな。急いで携帯を取り出して呼び出してみた。が、繋がらない。

「何してるんだよ…」

何度掛け直しても出てくれない。と、教授が立ち上がって首を振ってきた。

「彼女に何を言っても今はムダだ。時間が解決してくれるのを待つしかないだろうな。まあ落ち着いて、ひとまずそこに腰掛けたらどうだ」

と教授が机の横を廻ってこっちへ出てきて、応接ソファを示しながら奥に腰掛けた。

（まさか、ホントに辞めるなんて事…）

彼女ならやりかねない。辞めてからじゃ何を言っても手遅れだ。せっかくここまで上手くいってたのに。何とか思い留まってくれればいいけど。

「ハァ…」

携帯をしまいながら溜息をついてソファに腰を下ろした。

「どうやら大成功のようだな」

と、教授がまじまじと見つめてきた。

「えっ」

何がですか、と見返すと、教授がフッと笑みをこぼした。

「少なくとも、私の観察実験は期待した成果を収めたようだよ」

とウンウン頷きながらソファに凭れる教授。

「…そうですか」

そりゃあ良かったですね。

（自分の実験が良ければいいんですか）

マッタクこの人は。
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