ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「そう、確かにこの子は笑ってくれるんだ」

と呟くような声を漏らして目を伏せる所長。一体どうしたんですか?そんな寂しげな顔して。

「何か問題でも?」

窺うように尋ねた。

「ああ、まあね」

と遠くを見つめた所長がゆっくりと口を開いた。

「感情を表現することは難しい事じゃないんだ。楽しい、悲しい、嬉しい、悔しい、そんな感情を、この子は顔や身体で表現する事が出来る。この子は周りの状況を読み取って自分の表情を変えられるんだ。ボクらが笑ってたら、この子はボクらにちゃんと笑顔を返してくれる」

と身振りを交えながら話をした所長が、フッと宙を見上げた。

「ただそんな笑顔を見てるとさ、なんだか虚しくなるんだよね…」

と寂しげに一点を見つめる所長。

「なぜですか?」

とっさに聞き返すと、所長が俯くように頷いて返してきた。

「ウン。確かに可愛らしく微笑んでくれるんだけど、それは周りの状況を見て頭で判断してるだけで、嬉しいって気持ちをココロで感じて微笑んでる訳じゃない。そこなんだよ、どうも物足りないって感じるのはね」

と所長が拳を強く握り締めてさらに続けてきた。

「感情をアタマで判断するんじゃなくて、感情をココロで感じられるようにしたいんだ。もっと人間そっくりにね。…もう動きは人間そっくりに出来てる。人間そっくりの見た目も出来た。だから、これからボクらの次の目標となるのは、人間そっくりの『感じるココロ』なのさ」

と、パッと腕を広げて語りかけてくる所長。その気持ちはわかりますよ。でも…。
< 22 / 324 >

この作品をシェア

pagetop