ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「ごめんなさい」

とハニかんだ笑顔で、スッと僕の手を握り締めてくる広海君。

「ねぇ、あの時の言葉忘れて、先生」

とちょっと上目遣いで声を掛けてきた。

「あの時の言葉?」

「そう。先生は私から少しも目を逸らしてなかった。なのに私、先生にヒドイ事言っちゃった」

と僕の目をじっと見つめてくる広海君。

「いいよ。気にしてなんかないからさ」

わかってくれればね。

「ありがとう先生」

と手を握ったまま、スッと体を寄せてきた。良かった良かった、これで元通りだ。

「じゃあ、こっちに戻ってくるんだ」

今まで通りに、実験室に。

「ううん違うわ」

と、パッと離れる広海君。

(えっ)

違うのか?
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