ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 車の後部座席にミライとふたりで並んで座った。ふと見たミライは微かな笑みの横顔を見せて、じっと窓の外を流れる景色を眺めていた。外はもう夜更けの街の佇まいで、遊び疲れもあるのか所長も何も喋らず車内は静まり返っていた。このまま僕の部屋に着けば、そこからはミライとふたりだけになる。

(これからふたりで過ごしていくのか…)

一体どうなるんだろう。考えると急に不安になってきた。

「所長、明日から僕は何をどうしたらいいんですか?」

運転席の座席の肩に手を掛けて、ハンドルを握る所長に問い掛けた。

「いつも通りに出勤して、いつも通りに助手の仕事をしてくれたらいいよ。ミライを連れてね」

と最後にチラッと振り返って微笑んでくる所長。

「いつも通りって…」

何をどうすればいいんですか?全然見えてこないんですけど。

「大丈夫。フツーに過ごしていればいいんだよ、フツーにね。慌てる事なんかないんだ。普段通りに仕事をこなしていれば、何にも問題なく過ごしていけるよ。心配なんて要らないさ!」

って、明るく意気込みを見せてくるけど。

「そう上手くいきますかぁ?」

どうにも前途多難に思えて仕方ないんですけど。

「上手くいくよ。大丈夫さ!」

とパッと振り向いて、ニッコリと微笑んでみせる所長。

(どこからそんな自信が)

ホント、その溢れ出る余裕と自信には惚れ惚れしますよ。

(…ま、頑張ってみるかな)

所長のにこやかな笑顔に、一つダマされてみるか。
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