ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「そうだ、私が知ってるちょうど良いテーブルバーがある。今ぐらいから開いていて、渋いマスターが一人でやっている落ち着いた雰囲気の店だ。酒も料理も本格的で、女性も入りやすい。そこなら大丈夫だろう」

と言葉を並べ立てた教授。さすがですね。

(助かりましたよ)

とにかく広海君には何か食べさせて、ミライは飲ませるだけにしないと。

「ちょっと待ってくれ。もらった名刺に地図が載ってたんだが…」

と教授が内ポケットから札入れを取り出して開いた。

「ここだ。ダンロという店だよ」

と教授が立ち上がって名刺を渡してきた。

「じゃあ私はこれで失礼するよ。後は三人で宜しくやってくれ」

と立ち去ろうと振り向く教授。

「えっ、帰るんですか?」

このまま放り出すんですか?最後まで見て行かないんですか?

「ああそうだ。じゃあな」

とフッと口元を緩めて手を振る教授。じゃあなって…。

(後で映像を見て、自分だけ一人で楽しむつもりですね…)

とツッ込む間も無く、教授がさっさと廊下へ出て行ってしまった。マッタクこの教授は。面倒なコトは人に押し付けて、自分だけ楽しいコトばっかりぃ。

「じゃ先生、行きましょう~」

とにこやかに声を上げた広海君に腕を取られて、引っ張られるように実験室を出た。
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