ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「ここ座ってよ先生。すぐコーヒー入れるから」

と立ち上がって部屋の隅の流し台へ歩いていく広海君。

「あ、ああ、すまない…」

空けてくれた席に腰を下ろして、ひとまず息を整えた。

「ねえ先生知ってた?ミライさんって、コーヒー飲んだ事ないんだって」

「えっ…」

そりゃそうだろう。ミライがまた正直に答えたみたいだ。

(…ここは変に否定しないで、話を合わせた方がいいか)

そのまま初めて聞いたように驚いて返した。

「やっぱりありえないよねー」

と二人の院生の方を振り返る広海君。院生たちもパッと顔を上げておしゃべりモード全開。

「アメリカに住んでたんでしょ?それで飲んだ事ないなんてあるの?」

「でもお酒はとっても強いのよ。ビックリしたんだから」

「ふ~ん。ねえ、どんなお酒飲んだらそんなに綺麗でいられるの?お肌ツルツルだもんね」

「お化粧ノリよさそうー」

「美容に良いお酒があるなら教えて♪」

「そんなお酒があったって、ルミちゃんには意味ないわよ」

「どうして?」

「ルミちゃんのお肌が荒れるのは、飲・み・す・ぎ!」

「ひどーい」

とハハハと笑いが起こった。

「酒は百薬の長と言うじゃないか。程々に飲むのが大事だという事だよ」

と奥から教授が声を上げた。と、広海君が寄って来てコーヒーを机にコトンと置いていった。
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