探偵喫茶へようこそ
「最後まで聞け。俺は、三崎洋一が誘拐犯を操っていたことが不思議なんだ。過去を調べて、不良だったとか、組の長だったとかっていう情報が出てこなかった」
この質問に時間を割いてもいいと思い、知由は答える。
「奴も演技をしていたのだろう」
「なんのために」
「普通にあたしに接触して、あたしが言う通りに守られると思わなかった奴らは、あたしを誘拐し、手元に置いておきたかったのだろう」
知由の答えは的を得ていた。
「そのために悪者のトップになった、と」
「あたしはそう考えた」
海も同じ結論に至ったため、特に何か言うことはなかった。
「ややこしいな、お前の家族」
ただ、他に思った、いわゆる余計なことは口にした。
「黙れ」
洋一と夢里と一緒にされたくない知由は、今まで以上に海を睨んだ。
「揃いに揃って演技上手」
それでも海は、感じたことを言うのをやめない。
「海! やめろ」
知由にしては珍しく、大声だった。
店内が静寂に支配され、知由たちに視線が集中したが、雪兎や夏芽が上手く誤魔化す。