探偵喫茶へようこそ
「でも事実だ。お前に初めて会ったとき、俺たちはすっかり騙されたし」
それには知由は何も言わなかった。
「あ、そうだ」
「今度は何を思いついたのだ」
こう次から次へ、気になった点を質問してくるところはどこか、一弥を思わせる部分がある。
憎しみのこもった視線を向けられても折れない当たりは、一弥と違うが。
「お前さ、あのビルに突入するとき言ってたよな? 『あたしの親を名乗った阿呆な犯人』って。その答え、聞いてねえなと。あれ、三崎洋一のことを知っていた上で、一弥にあんな態度を?」
わざわざ蒸し返すようなことではないではないか、と心の中で答える。
だが、実際はきちんと答える。
そうしなければ、海の質問攻めから抜け出せないと思ったからだ。
「当たり前だ。あたしは三崎洋一が誘拐犯に『親がいないから、本当の親を名乗ればついて来る』とでも言ったかと思っていたのだ。だから、名前を知られているのも分かっていた。だが、誘拐するとき、犯人はあたしを『知由梨』と呼んだ。そしてなにより、自分を三崎梨奈と名乗った。な? 阿呆であろう?」
同意を求められ、海は頷く。
「ああ、馬鹿だな」
それで会話を終了すればよかったのかもしれないが、知由は続ける。