探偵喫茶へようこそ
それは、なぜ自分を知由梨と呼んだのか。
それが知りたかっただけ。
本当に、大した用ではない。
「無理だな」
まあもし、大事な用だとしても、他人が容疑者に会うことは出来ない。
知由がもし、その容疑者の家族もとい知り合いであれば、話は別だが。
「そうか……では、あの女に指示をした……あたしの父親は捕まるか?」
知由は話を一気に変えた。
だが、これもまた気になっていたことだった。
「……話を聞けば、知由を誘拐しろとしか言われなかったらしい。この連続誘拐事件はお前の父親の指示じゃない。だから、多少の罪はあるだろうが、そこまで重くはならないだろう」
「……そうか」
知由はわずかだったが、安堵の表情を浮かべた。
「何だ、気になるのか?」
正広は滅多に見ることが出来ない知由の表情を見て、からかった。
「……うるさい。早く指示を出せ」
知由は照れ隠しにそっぽを向いた。
「もう出したさ」
正広は得意げにする。
「チッ」
そんな様子を見て、知由は綺麗な舌打ちをした。
「ちぃちゃん、舌打ちしない。さ、帰ろう?」
いつの間にか立ち直ったらしい雪兎が、知由の背中を押す。