探偵喫茶へようこそ
「知由?」
「うん。知的で、誰にも縛られない、自由で自分を持った子に育ってほしいな、と思って」
そう嬉しそうに語る夢里の顔は、女子高生ではなく、まさに母親の顔だった。
「いい名前だな」
「でしょ? あとね、洋一くんの最後の文字と、私の、夢里の最初の文字を合わせた名前でもあるの」
「なるほどな」
洋一は夢里の遊び心が変わっていなくて、なぜか安心した。
そして夢里は寝ている知由を抱きかかえる。
「私、この子にお母さんって、思ってもらえるかな……」
そう言う夢里は不安一色で、洋一も自信をなくしかける。
「それで言ったら、俺だって自信ないよ。親になるには確実に早いわけだし」
でも、どれだけ自信がなくなっても、知由の親であることから逃げることは出来ない。
そう言い聞かせて、夢里を励ました。
「……だよね。私たちも、この子と一緒に成長出来たらいいね」
「ああ、そうだな」
二人は顔を合わせて笑い、知由の寝顔を見つめた。