探偵喫茶へようこそ
「……滋といることは、私にとって小さな幸せだった。滋がいない日々は、寂しさでいっぱいだった。だから、これからは滋からたくさんの愛をもらいたいな。もう、寂しさに耐えるなんてできない。……どうかな?」
滋は自信なさげに、夏芽の目を見た。
「……正解」
夏芽は目尻に溜めた涙を拭いながら、微笑んだ。
「何言っている。まだ、正解ではないだろう」
幸せな空気に水を差した知由は、滋の持つ手紙を指さした。
「この『……だ、……』も解くべきところであろう?」
「あ……うん」
知由にそんなことを指摘されると思っていなかった夏芽は、戸惑い気味に答えた。
「でも、僕の力だと、もう解けないよ……」
「では、自分の口から言ってやれ」
知由は滋の左手にあった三本の薔薇の花束を、夏芽に渡した。
そんな知由の顔は、どこか楽しそうだ。
「……スキだ、バカ」
夏芽はその花束を滋向け、頬を赤らめながら言った。
思わぬ告白に、滋も赤面する。
その様子がおかしくて、知由は声を殺して笑った。