魔王と王女の物語 【短編集】
リロイはディノと一緒に地図を見て夜に備えていたが、コハクはソファに寝転がって腹の上にラスを乗せてその光景を満喫していた。


「絶景絶景」


「ねえ、コーも一緒に行くんでしょ?私人魚さんに会いに行きたいな」


「…今…人魚って言いました?」


ディノが地図から顔を上げて青ざめた顔でラスを見ると、コハクは思いきりとぼけて逆にディノに聞き返す。


「はあ?人魚ってなんだよチビはそんなこと言ってねえし。人魚?伝説の人魚のことか?居るのか?」


「い、いえ…盗み聞きをしたようで失礼しました」


「あいつには謝らなくていいですよ。それよりラス、君も行くの?」


「うん、お留守番は嫌。だめ?」


…リロイもコハクもラスのおねだりには滅法弱い。

幼い頃から共に育ってきて長い間恋心を抱き、今も騎士道精神が抜けないリロイは碧い瞳を緩めて仕方なく頷いた。


「じゃあ僕の側に…」


「ふざけんなこのガキ。チビの旦那は俺!お前はそいつと一緒に魔物を殺しまくれ!」


3人の関係性が分からず目を白黒させるディノは、先ほど確かにラスが人魚といったことがずっと気にかかっていた。


あの入り江に美しい人魚が居ることを知っているのは自分だけのはずーー


「山中を中心に狩りましょう。海沿いにはほとんど出ませんから」


「へえ?じゃあチビ、魔物は海沿いには出ないらしいから散歩でもするか」


「うんっ」


「ああいえ、あの…」


牽制したつもりが逆効果になってディノが焦り、リロイはディノを安心させるように肩を叩いた。


「あいつは冗談ばかり言うので本気じゃないですよ、大丈夫」


あからさまにほっとした顔になったディノに対してのラスの反応。


「可愛い」


「!!あのガキ!オレの天使かつ女神のチビに褒めてもらえるなんて!羨ましい!」


…魔王は相変わらず、ラス一筋馬鹿。


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