悪魔の囁きは溺愛の始まり
蒼大さんの思惑通りに、どんどん事が運ばれていく気がする。

数名の重役秘書らしき方と廊下ですれ違えば、驚いた表情を見せられた。

噂が大きくなりそうな予感がしてならない。


「一花、ご両親の予定は?」

「今週末、家にいるそうよ。」

「なら挨拶に行く。」

「私、仕事に行かないと………。」

「送ってやるし、迎えにも行く。」


また言葉を遮られた。

手を繋がれた状態で歩いていた事に今更気づいた。


「はぁ~。」

「一花?」

「マリン本社に来づらくなる。絶対に噂が立つよ。」


盛大な溜め息を吐いた。

今日より噂は正確になって広がるだろう。


「別に問題ない。」

「岡崎部長は知ってますか?自分がどれだけおモテになるか。」

「知ってる。だから?」


嫌みを込めて言ってるんだけど。

蒼大さんには嫌みが通じないのか?


「私が注目されて困るって事。」

「別に会社も違うし、会議で来るだけだ。それとも転職でもして……うちに来るか?」

「しません。」


今更ながら、蒼大さんのマイペース振りが身に染みて分かった。
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