悪魔の囁きは溺愛の始まり
蒼大さんの部屋で二人っきりになれば、自然とそんな雰囲気になってしまう。

だから最近は私の部屋で過ごす事が多い。


「一花、嫌?」

「………蒼大さんが嫌なんじゃない。」

「なら何?」

「…………。」

「一花、言ってくれないと分からないだろ。」


蒼大さんの瞳が私を観察するように見据えている。

抱き寄せられた腕に力が込められ、苛立ちが伝わってくる。

目を逸らさず、心の内を吐露していく。


「この関係を壊したくない。」

「壊す?」

「今が凄く幸せ。それが壊れてしまいそうなの。」


至近距離で見据えてくる瞳を同じように見つめ返す。

沈黙が私の部屋に流れた。

蒼大さんが頭の中で必死に理解しようとしているのだろう。


「一花、壊れないだろ?」

「彼女、ううん、もしかしたら彼女達の二の舞にならない?」

「………。」

「『私を抱きたい』のは何で?」

「『すべてが欲しい』からに決まってるだろ。」


即答する蒼大さんの真意を見極めようと、瞳の奥まで観察するように見つめる。
< 161 / 200 >

この作品をシェア

pagetop