悪魔の囁きは溺愛の始まり
悪魔の囁きは甘い囁き
駅からの道のりを歩いて会社に向かう。

ハワイの気候が懐かしい。


「うっ、寒い。」

「お嬢様には寒さが身に染みるか?」


背後から聞こえてきた嫌みに振り返れば、やっぱり渡部さんが後ろを歩いていた。

無視して前を向いた。


「お嬢様は彼氏と南国へ行ったんだろ?」

「………。」

「無視かよ。俺、上司だぞ。」


彼氏と南国に………。


「ふふっ。」


変な笑い声が漏れてしまい、ハッと我に返るが……すでに遅し。

ニヤニヤと私を見る渡部さんがいた。


「思い出し笑いかよ。キモいヤツ。」

「なっ、キモくないです。」

「まっ、幸せそうだな。」


渡部さんの言葉に何も言い返せなかった。

私は幸せだけど……


「あっ、変な同情とかウザいだけだから。」

「ウザい?」

「別に俺は俺で見つけるし。青山よりもっともっと最上級の女を。」


渡部さんが私から視線を外し、前だけを見据えて歩く。
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