悪魔の囁きは溺愛の始まり
「音、本気にならないでよ。」

「わかってる。」

「波もなんか言って。」


鏡で髪型をチェックしている琴音は本当に分かっているのだろうか。

冷静な波羽に助けを求める。


「音、わかってる？『ひとときの恋』でしょ？本気にならないでよ。」

「『ひとときの恋』だから楽しんでるんでしょ。大丈夫、ちゃんと分かってるから。」

「本当？」

「波も花も楽しみなさい。来月からは毎日、毎日、疲れちゃう生活かもしれないんだから。」


琴音が鏡から私達二人の顔を覗きこんできた。私と波羽を交互に見る。


「今は旅先で普段の生活から抜け出してきてるの。だから楽しまないと損でしょ？」

「音、お互いが同じ考えだから。それは忘れないで。」

「大丈夫。折角、あんなイケメン集団に出逢えた訳だし、楽しもう。」


本当に分かっているのか………。

結局、琴音に説得されてしまったような気もしないでもない。

私達はまた彼らの待つ誘惑の世界へと戻っていった。
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