お見合い結婚時々妄想
祥子が事故にあって3日後
退院する事ができた
とりあえず、足の捻挫以外は異常が見当たらないということだったので、本当に安心した

退院した後、祥子がどこに帰るかで少し揉めた

祥子は自宅に帰りたいと言ったのだが、そうなったら僕が仕事の間は1人になってしまう
松葉杖はいらないにしても、捻挫をしているのだ
祥子の事だから、その足で家事をこなそうとするのは目に見えていた
実家に帰ったら?と言ってみたが、義母も働いているので家にいるのと同じだと言われた
それなら父が自分の家に来ればいいとも言ったのだが、流石にちょっと気が引けた
結局、祥子は自宅に戻ることになった
僕としては、祥子が入院している間、寝室のベットで隣に祥子がいない事がこんなにも寂しいことなのかと思っていたので、良かったのだが……


自宅に帰って数日後
ちょっとした事件が起こった
今、祥子はリビングのソファーに座って、下唇を噛みながら僕を見上げている
僕は、祥子の前に立って腕を組んで祥子を見下ろしていた

そう僕は今、怒っている
そんな可愛い顔して見上げてもダメ
僕の言うことを聞かないと、許してあげない


「祥子、退院した時に僕と約束したこと覚えてる?」
「覚えてる……ます」
「どんな約束だった?」
「無理して家事をこなさない」
「良かった、ちゃんと覚えててくれたね」
「だから、無理してないもん…です」
「無理してないなら、どうしてベランダがあんな事になってるの?」


そうして僕はベランダを指差した
祥子もベランダに目をやったが、すぐに目を逸らして下を向いた


「祥子、よく見て。どうなってる?」
「物干し竿が落ちて、洗濯物が落ちてます……」
「それから?」
「……落ちた物干し竿が、プランターに当たって、プランターがひっくり返ってます」
「そして、洗濯物は土まみれになってるよね?」
「……はい」
「それで、祥子はどうなってた?」


下を向いたまま、何も言わないし……


「どうなってたの?祥子」
「バランスを崩して、倒れてました」
「て言うか、僕が帰るまで気を失ってなかった?それとも、祥子にはベランダの入り口で寝る趣味でもあったの?窓も開けっ放しで?」


祥子は何も答えず、膝の上で両手をずっと握りしめている
その手の上に、ポタポタと雫が落ちてきた

ちょっと言い過ぎたかな…?

祥子の前にしゃがんで、両手で祥子の手を握りしめた


「祥子が倒れてる姿を見て、僕がどれだけ驚いたか分かる?心臓が止まるかと思ったんだから。それに、今日は早く帰ったからいいものの、もし遅く帰ってたら……そんなこと考えたくもない」
「……んなさい」
「何?聞こえないよ?」
「ごめんなさい」


消えいるような声でやっと謝った
僕はため息をついて、祥子を抱きしめた


「何で、全部1人でやろうとするの?祥子は怪我人なんだよ?いつもみたいに動けないことは、自分でも分かるよね?」


僕の背中に手を回して、泣きながら頷く祥子
僕はそんな祥子の背中をポンポンと叩いた


「じゃ、なんで僕を頼ってくれないの?祥子にとって、僕はそんなに頼りない夫なの?」


僕に抱きついたまま、首を横に振った


「だったら、もっと頼って、甘えてよ祥子」
「だって……」
「だって、何?」


祥子はしゃくりあげながら言った


「私、い、いつも、慎一郎さんに、迷惑かけて、わ、私が動けないから、慎一郎さん、つ、疲れて、帰って、来てるのに、私、せ、専業主婦な、なのに……」


多分、祥子の言いたいことはこうだろう


自分が動けない分、僕に家事をさせるのを迷惑をかけていると
僕に、家に帰ってから、家事をさせるのは、専業主婦の自分からしてみれば、我慢できないことだったんだろう
僕はまた大きなため息をついた
それを聞いて、祥子はまた泣き出した


「祥子、よく考えて?僕と祥子が逆の立場だったら、どう思う?」
「逆の立場?」
「そう、僕が事故に遭って、足を捻挫して動けないのに、それでも無理して出張に行ったりしたら、祥子はどう思う?」


祥子はガバッと体を剥がして、首を横に振った


「心配するでしょ?」
「……する」
「僕の気持ち、ちょっとは分かった?」


祥子は素直に頷いた
僕はふっと笑って続けた


「まあ、その場合は部下に代わりに出張に行ってもらえばいいけど、祥子が家事が出来なかったら、僕しか代わりがいないんだよ?だから迷惑だなんて思わないで」
「でも」
「でもじゃない。それに、独身生活は祥子より長いんだから、家事は一通り出来る。だから気にしないで。僕達は家族でしょ?助け合って生きていくのが当たり前だと思わない?」
「うん……」
「もう無理はしないね?」
「はい。ごめんなさい」


僕はにっこり笑って祥子の頭を撫でた


「頭、どこぶつけたの?痛くない?明日病院行った方がいいかな?」
「大丈夫だと思う。ここ、タンコブが出来てる」


祥子が触ってるところを触ると、確かにタンコブが出来てた


「あ〜あ。痛そう。今日はお風呂入らないほうがいいね。僕はベランダ片付けるから、祥子は寝室で休んでて」
「えっ、私も手伝う!」
「祥〜子?」


僕が軽く睨むと、祥子は黙って立ち上がり、寝室へと向かった
ベランダを片付け、洗濯をしている間に風呂に入り、洗濯物を干して、その後色々していたら、祥子を寝室に行かせてから、2時間近くたっていた
祥子はもう寝てるだろうと、ベットに入ったら、祥子が体をすり寄せてきた


「まだ起きてたの?」
「うん」

僕はそっと抱きしめた

「慎一郎さん、今日はごめんなさい」
「いいよ、気にしないで?」
「私の事、嫌いになった?」
「ならないよ。どうして?」
「だって、あんなに心配かけて、子供みたいに泣きじゃくったし。いい加減愛想つかされかもしれないって……」


僕は祥子の額にキスをした


「祥子の泣き顔が可愛くて、怒ってるのが辛かったよ」
「え?」
「あんな顔見せるのは、僕だけにしてね、祥子」
「し、慎一郎さん」


唇にキスを落とした


「それに、祥子の怪我が治るまで、祥子を抱くのを我慢してるんだから、あまり煽らないで」


多分祥子の顔は真っ赤になっているだろう


「だから早く怪我を治してね」


祥子は軽く僕の胸を叩いた
僕は、ははっと笑って祥子を抱きしめて眠った
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