失恋の傷には媚薬を


姉が着ていた記憶がない洋服たちを
ダンボールに詰めた
買い物をした気分で
お買い得感で気分はウキウキだった


姉が死んだのに不謹慎だが
私には関係ない
初七日が終われば
当分、実家にも帰ることはない




「なんか、スッキリした顔だな」



『そう?でも、これで安心して暮らせるわ』



誰もこないと思っていたが
健ちゃんが訪ねてきた
私を心配して…、それはないか



『健ちゃんも、やっと解放されたんだから、この家に近づくのをやめたら?自分の幸せを考えた方がいいよ』



「解放って…」



呆れていたのだろう
二人しかいない姉妹
姉が亡くなったのに
涙ひとつ見せない私だ

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