【短編】甘えないで、千晶くん!
もう、やめやめ!
佐藤くんといるのに千晶くんのことばっかり頭にチラついて、失礼にも程があるよ私!
「明日、行こう!何時にどこにする?」
だって別にケンカしたわけじゃない、よね?
千晶くんが勝手にヘソ曲げてるだけだもん。
ここは千晶くんのことなんか忘れて、パーッと佐藤くんと遊ぼう。うん。
明日は土曜日。
めいっぱいオシャレして、人生初のデートを満喫するんだ。
「あれ、紗和あんた今日1人?千晶くんは?」
「………ただいま」
放課後久々に1人で帰宅した私に、おかえり、より先にお母さんが聞く。
お互いよっぽど用事が無い限り一緒に帰って、そのままどっちかの家に部屋にお邪魔するというのがお決まりのパターンだった私と千晶くん。
こんな風に1日口も聞かずに目も合わさないで登下校も別々なんて多分、今回が初めて。
前に私が大事に取っておいたアイスを千晶くんが食べちゃってケンカした時でも帰り道は一緒だったのに。
「うー…」
お母さんに説明するのも面倒で、そのまま自分の部屋のベッドにダイブする。
枕に顔を埋めて、足をバタバタ。