【短編】甘えないで、千晶くん!
なんて思っても、会いに行く勇気も、LINEを送る度胸もなくて。
結果そのままなにも行動することなく、夜は更けて朝を迎えて。
「ごめん佐藤くん!」
千晶くんのことを考えてたら寝れなくて、寝坊した私が待ち合わせ場所についたのは決めた時間より10分遅れ。
「ゆっくりでよかったのに。転んだりしなかった?」
「そ、そんなにドジじゃないです!」
…本当は何回か危なかったけど。
「ならよかった。じゃあ、行こうか」
遅れてきたのに嫌な顔一つしない佐藤くんに、頭が下がる。
まさか他の男の子の事考えてて寝坊した、なんて口が裂けても言えないや。
…でも、千晶くんが悪いんだもん。
こんな意地悪されたら、誰でも考えちゃうよ。
「はい、黒木さんの分」
「え、いいよ!悪いよ」
「映画はタダみたいなもんだし、これくらい出させてよ」
映画館につくと、佐藤くんが私の分の飲み物まで買ってくれて。
「ありが」
「…紗和?」
受け取ろうと伸ばした手は、その聞き慣れた声にびくりとはねた。