【短編】甘えないで、千晶くん!
佐藤くんの発言を否定しようとしたけど、隣の千晶くんと田中先輩に遮られ、不機嫌度はマックス。
もう、なんで千晶くんと田中先輩に怒られないといけないの!!
私は佐藤くんときたのに、何でかダブルデートみたいなことになっているこの状況に頭を抱えたくなる。
せっかく気分転換しようと思ってたのに、隣に悩みの種である千晶くん本人がいたんじゃ意味ないじゃん。
「……」
ちらりと横目で千晶くんを盗み見ると、見慣れてるはずの整ったお顔。
どうしてかな。
昨日1日離れてただけなのに、何だかすごく久しぶりに会う気がして。
「…なに?」
「な、なんにも」
私の視線に気が付いた千晶くんと目が合って、思わず逸らす。
変なの。
今まで抱きつかれても、膝枕してあげてもなんとも思わなかったのに。
どうして今日は目を合わすことさえままならないんだろう、私。
映画が始まって暗くなった館内で、きっと私1人だけがそわそわしてる。
千晶くんが隣に座ってるってだけで、落ち着かない。