『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
「記憶にないのは、真凛だけじゃなくて
勿論私たち3人のことも覚えてなくてね…
最初は苦労したよ!
事故で塞ぎ込んじゃってたし、暗いのなんのってさ。

毎日入れ替えで御見舞い行って…何度も追い返されたりしてたけどね。」

未来の涙なんて久しぶりに見た気がした。
その涙が物語るのは
想像を絶する毎日をベンが味わっていて
それを未来と千秋と祐介は少しでも支えになってきてたんだということがわかった。

その時、私はそこにはいなかった。
なんの支えにもなってあげれてなくて…
未来達の辛さを聞いてあげることさえしてあげれてなかったんだ。

何も知らなくてごめんね。
何も出来なくてごめんね。



その時初めて
何も知らない事も罪になることを
初めて思い知らされたのだった。



「私たち3人は、ゼロから…ううん、
マイナスから改めて前田と友達になったんだよ」


マイナスから…
相当大変な事だと思う。
元々無口なベンなのに、事故で卑屈になっていたベンとマイナスから友達になるのは
覚悟がないと出来ない事だと思った。


「言わなくてごめんね。」

…わかってる。
言わないことが、みんなの優しさだってこと

痛いほどわかってる。
でもね、言って欲しかったよ…


みんながベンを支えた10年間は
私が何もしなかった10年間。


この10年間を埋めようとしても無理だよ。



でも…



私はみんなが思うほど
この話を受け止めきれないくらい
子供だった?

みんなの優しさが痛いょ…。




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