『来年の今日、同じ時間に、この場所で』

笑顔の行方

『ベン!部活行こうぜ!』
サッカー部の祐介が廊下から走ってきた。


いつしか、前田つとむは
勉の漢字の読み方とハーフ顔からか
”ベン”
という愛称で呼ばれるようになっていた。
私とベンの出逢いは最悪なものだったけど
いつしか今では普通に話す仲になっていた。


「ほんっと、祐介とベンは、仲良いよね。
いいよ、あと私やっておくから行ってきな」

それまで私と日直日誌を書いていたベンに
私は言った。


『なに?ふじさんヤキモチ妬いてんの?』

ニヤケながら祐介が言った。


私、富士屋真凛は
ふじやまりんは、平仮名読みして繋げると
ふじやま りん
になるってことで、
いつしかみんなから
ふじさん。と呼ばれるようになっていた。

『じゃあ、あとやっとけよ、フジヤマ』

「なによ!偉そうに!
はい、はい。早く行きなさいよ。ったく。」

ベンだけは、私のことを
フジヤマって呼ぶから違うクラスの人から
たまに、フジヤマさんて間違えて苗字を覚えられるんだよね。


ベンはサッカーに夢中で全く気付いてなさそうだけど、とにかくモテるんだよね。
あのルックスだから他所の学校からも人気で
ファンクラブまであるくらいだった。

でも当の本人は
サッカー以外は興味がないらしくて
まったくもって気付いてない。




めっちゃ鈍感な奴。





私が最初に見たベンのキラキラ背景。
みんなも見えてるんだろうな。


あの綺麗な顔立ちで、
くったくのない笑顔をだすもんだから
そりゃあ、もうモテること‼︎

入学してから今まで
何人もの女の子が告白しては涙していた。

普段は男子としか話さないベンと
唯一話する女子は私だけだったせいで
いつも決まって
ベンに告白したい女の子達から
呼び出し係を命じられるんだよね。

そのおかげで
結果がどうだったかも知ってしまうんだよね

でも、これまで成功者は誰もいないから
私まで気まずくてしょうがない。

しかも、ベンの断り方は有名で
決まってこう言うらしい。

『俺、付き合うとか興味ないんだよね』

ベンの心に止まるコはどんなコなんだろう。
サッカーよりも夢中になれるような女の子なんているんだろうか。



これだけ断っているのを見ると
ベンの気持ちを射止める子が
どんな子か気になってしまう。


そして、今日もまた
ベンに告白する子から呼び出しを頼まれる。




頑張ってね?と、心の中で呟いた。





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