内実コンブリオ
「華。卵焼き、卵焼き!」
声をかけられ、焦点を合わせると、森緒ちゃんがあーんの口を開けて待っていた。
それに応えるために、森緒ちゃんの口まで卵焼きを運ぶ。
少し照れ臭いけど、でも、森緒ちゃんとなら、何だって平気な気がする、多分。
「うーん、おいし」
「ずるいなあ。女子同士は羨ましいわ」
「なら、角野さんもしてもらえばいいじゃないですか」
森緒ちゃんは、少し挑発的な態度で角野先輩に臨む。
先輩はこちらを振り返り、期待の眼差しを送ってくる。
「………無理です」
案の定、先輩は項垂れた。
正直なところ、悩んだ。
一瞬でも出来そうに思ったには思ったが、思っただけで実行にうつすのは無理だった。
先輩は、拗ねた子どもの様な声を出す。
「何でなんよー。森緒とは、あーん出来て…
初対面の男の手ぇ握っとるし…
いつからそんな軽い子になったん?!」
「なっ、それは違っ…!!」
「えっ、えっ、何の話?」
先輩の父親感覚の言葉に、妙に森緒ちゃんがのってくる。
その話題を掻き消そうと、必死にわーわー、と普段より大きめな声で騒ぐも、無駄に終わった。
先輩の口は一度開いたら、塞がりそうもなかった。