内実コンブリオ
栗山くんは何だか、どぎまぎしていた。
そして、少し額に汗を滲ませたままで、話題をふる。
「そういえばさ、華さん。成人式の時の同窓会さ、来てなかったね。5、6年前か…?だいぶ前だけど」
「ああ、うん。たしか、親戚回りしてたかな」
「そうだったんだ。なんか残念だね」
「まあ…うん」
正直のところ、残念だとかは特に思っていなかった。
それが、この曖昧な言い方として表れている。
そりゃ当時の自分は、ひょっとしたら栗山くんに会えるんじゃないか、だなんて、そんなことを考えた。
諦めが悪い、と自分を責めたりもした。
でも、あいつも居たら、と思うと行く気が失せたのは、言うまでもなかった。
中学時代の面子のことを、いろいろ遠回りに聞きたくなる。
「同窓会、人は結構来てた?」
「うん。たしか揃った人数、だいたい80人とか言ってたよ。まあ、ほとんどの奴とは話したし。来てない人たちのが少なかった」
「すごいね…じゃあ、結菜ちゃんとか…」
本当はこの後に「一緒に行っていたの?」なんて、馬鹿げた科白を続けそうになった。
でも、それを止めた。
そんな長く付き合っていられるはずがない、と思ったからだ。
こんな風に思うのは、性格が悪いと思われるだろう。
それでも、自分には少しの確信があった。
自分の不確かな記憶を辿っていくと、過去に栗山くんから発せられた言葉に辿り着く。
確かこんな感じだったはず。
『一生、同級生―』
それすらも、あやふやだ。
「結菜?」
栗山くんが、不思議そうに呟いた。
そして、少し考え込んだ後。
「あー…多分。居たかもしれない…な」