内実コンブリオ
自分があいつを話題に出したら、あいつのこと、間違いなく悪く言ってしまう。

しばらく悩んだ。



「って、そりゃ、仲のいい友達くらい居るよね。さりげなく失礼なこと言った。ごめん」

「ううん、大丈夫。胸を張って言えることじゃないけど、中学に友達居なかったし。
あの、実はね…」

「華さん?」



栗山くんは、黙り込んだ自分を不思議そうに見ている。

別にあいつのことを悪く言ってしまいさえしなければ、大丈夫かもしれない、そう思った。



「あの…かなり前に水川と会った。電車で偶然」

「え、水川と?!」

「うん」



意外とすんなりと言えてしまった。

何をNGだと思っていたんだろう、と自分を馬鹿らしくも思った。



「なんか話した?」

「え、あ…変わりないねって、話を」

「へえ、あいつ変わりなかった?」

「う、うん。あ、でも背がむっちゃ高くなってた」



それを聞いた栗山くんの表情は、興味津々という風だった。

ただ、笑ってはいなかったけれど。

でも、自分も興味津々だった。

水川の話題を出してからだ。

突然に生き生きの度合いが大きくなった彼を見て、自分は珍しいものを見ている気分になっていた。

やはり嬉しいのだろうか。

自分は、いまいち今の栗山くんの感情が、わからないでいる。
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