内実コンブリオ

栗山くんは少し口元を触りながら、何かを思い返している様子だった。



「すっげー印象に残ってて…たしか、中1の夏休み」

「え」

「水川と俺、喧嘩っつうか…ちょっと言い合いになったんだ。なんか熱い展開になったというか…」



言葉を選んで話そうとしているのが、見てとれる。

そして、栗山くんは当時の話を始めた。







レギュラーメンバーが発表され、1年生では栗山くんともう一人だけが、選抜されたらしい。

そして、そのまま夏休みへと突入する。

夏休みを境に水川はわかりやすく、サボりだしたと言う。

案の定、水川は毎日していた練習後の自主練にも、ぱたりと姿を見せなくなる。

練習が終われば、足早に帰宅していたのだ。

自分は、それをカシスオレンジに手をつけながら、聞いていた。

自分は、水川が教室でやんちゃしている姿しか、見たことがなかった。

栗山くんが言うには、水川は野球のこととなると、集中力も尋常ではなく、熱心な奴であったそうだ。

正直のところ、自分には想像もつかない。

中学に入学してから、たった3ヶ月といえど、そんな奴を見ていた栗山くんは、少し残念に思ったらしい。
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