内実コンブリオ
「まあ、何つぅか…流されて生きるのも、楽そうで意外と辛いもんすよ」
栗山くんに、そんなことを言われてしまえば黙るか、もしくは唸るしかなかった。
自分には、否定することも、肯定もすることもできないから。
それどころか、この場でメモをとりたくなった。
流されることは、楽そうで辛い。
自分にはそれが、ごもっともだと思った。
「お待たせしましたー。明太子入りだし巻き玉子と、熱燗ですねー」
ようやく待ちかねた、熱燗様のご到着だ。
と言いたいところだが、自分は別のもの、好物にしっぽをブンブンと振っていた。
明太子と玉子焼き、どちらも大大大のつく自分の好物である。
箸で一口の大きさに切り分け、迷わず口へ運ぶ。
ふわふわ。明太子の塩辛さも丁度よく、あとからジンジンとくる辛子…
ああ、好きすぎて、涙が出そう。
「そんなに好き?」
栗山くんの声で、我に帰った。
そういえば、はじめは二人で食べるつもりで注文したのに。
一人で頬張ったりなんてして、申し訳なさと、恥ずかしさが同時に騒ぎだす。
「そういうのは、可愛いって…言うんだよ」
自分にとって、刺激の強すぎる追い討ちを食らい、ますます顔は熱くなる。
慌てて自分は、栗山くんの方に皿ごと差し出した。