内実コンブリオ
声を発して、喉を震わせれば、また刺激されて己の制御が利かなくなる。
壊れた涙腺は、もう自分のものではないようで。
自分でも訳が分からないほど、流れ出してくる。
森緒ちゃんは、そんな自分を無言で抱きしめた。
それが、また自分を泣かせた。
構わず、森緒ちゃんは自分の頭を背中を撫でては「よしよし」を何度も呟く。
「なあ、華。今日さ、夜、空いてる?」
「…う、うん」
「じゃあさ。美味しいものでも、食べに行こっか」
「うん…」
森緒ちゃんの腕の中で、会話をする。
温いこの人肌が、堪らなく恋しい。
森緒ちゃんの対応が、何もかも有り難かった。
自分はいつでも頼ることが下手くそだから、人との輪が相手にとっても、作りにくかったのだろう。
自分が一瞬、間に障子のようなに薄くても、壁をつくるから、相手にも戸惑われる。
だから、こんなにも人と距離が近いのは、おそらく初めてで、とても気恥ずかしかった。
涙が流れている間は、まともに森緒ちゃんに顔を見せられなかった。