マリンシュガーブルー
 店が取引に使われた訳も尊は教えてくれた。

『彼等は、若いあなたと若い料理人の宗佑君しかいなくて、経営に必死になっていて余裕がなさそうな店だったということで、動きやすかったと供述しています』。

 そう聞かされ、経営者の姉としてショックも受けた。その供述があったこと、尊の裏付けで姉弟の店は被害側と捜査結果を報告してくれたため、家宅捜索を逃れたという。

『もう、大丈夫ですよ。県警の刑事たちのいきつけの店になってしまっているんだから。おいそれ近づけないでしょう』と尊が笑ってくれた。

 この時ほっとしつつも、もっと弟と共にしっかりした店にしていかなくてはならいと深い反省も味わった。

 事件が解決し、尊は仮住まいを引き払い広島に帰ることになったことになった。

 あの部屋はバディの後輩と一緒に寝床暮らしをしていたという。
 美鈴を誘った夜は、事件解決後、後輩を先に広島に帰らせてから招き入れたという。
 そして翌日には解約をして引き払ったとのこと。
 心残りだった店に拒絶される覚悟を持って、彼は姉弟に最後の挨拶に来てくれた。

 そして、美鈴が追いかけて来た。彼にとって、思いがけないもの。こんな恋は滅多にないだろう。そう思ってくれた彼も警官だということを忘れて、美鈴を抱くことを選んだと言ってくれた。
< 104 / 110 >

この作品をシェア

pagetop