マリンシュガーブルー
 弟さんに挨拶をしに行くよ。

 尊がそう言ってくれた。とにかく、弟にも早く告げて謝りたいといっている。
 でも弟は尊さんが会いに来てくれたら、とても喜ぶと思うと姉としても伝えている。

 弟はあなたに食べてもらうのをとても心待ちにしていた。いちばんの常連様だったのよ。あなたを出入り禁止にしたのも経営者だからの決断で、ほんとうは身分も素性も関係なく食べて欲しかったのよ――だから謝る必要などないと美鈴は言った。

 あなたたち、姉弟はすごいですね。ヤクザのふりをしていた俺を受け入れていただなんて。俺、美鈴さんにも惚れていたけれど、宗佑君には胃袋掴まれちゃったかな。彼が笑った。

 肌を愛しあった後、彼の自宅でシャワーを浴びてホテルに送ってもうことになった。
 彼がシャワーを浴びている間、ベッドルームで身支度をしている時に見つけてしまう。
 本棚には沢山のトロフィーに表彰状が飾ってあった。中国地方の射撃大会で優勝とあって目を瞠る。
 だから、あんなに素早く的確に相手の拳銃だけを撃ち落とせたんだと納得した。
 それに壁に掛けてある警官の制服も見つけてしまう。夏の青いシャツにスラックスだった。

 いつ着ているのかしら。私服の刑事のようなので、美鈴に見せてくれるのはいつだろうかと見上げていた。

 ホテルに送ってもらい、別れ際に言われた。『弟さんに会いに行くよ。ご挨拶しなくちゃね』。もう結婚前提でいいよな――と再度聞かれ、美鈴はもちろん頷いた。
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