マリンシュガーブルー

 彼を見送って、美鈴はすぐにキッチンで調理をしている弟へ、黒い彼が書いてくれたアンケート用紙を持っていく。

「宗佑、あの人が書いてくれたよ!」
「マジで!」

 アンケート用紙を姉の手からひったくり、弟がマジマジとコメント欄を眺める。

いつも丁寧なうまいメシありがとうございます。オレンジの香りがする優しいドレッシングでした。オヤジの自分でも、このドレッシングは気に入りました。この季節は食欲がなくなるのですが、本日は美味しくいただきました。今後もなにが食べられるのか楽しみにしております。


「めっちゃ綺麗な字じゃん、うおー、やったーー!」
「良かったねー、宗佑!」

 いちばん気にしていたこと、そして気にしていた人からのコメントに宗佑は大感激したようで、ご機嫌で調理の続きを始めた。

 美鈴もお客様に呼ばれ、気持ちを落ち着けてフロアに戻る。
 その夜、義妹にもそのコメントを見せると一緒に喜んでくれた。

 三人で乾杯!
 もうヤクザでもいいよね! 気にしない! そうしようね!
 姉弟、義妹で気持ちの良い夜を過ごせた。
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