マリンシュガーブルー
 やだ、妊娠していたら良かったのになんて思っていた自分の首を絞めたくなってきた!
 また、痛い恋をしてしまった。後先考えず行動をするからこうなる。間違っていた! ほんとうに馬鹿だった!!
 もうこれで彼に会おうとか、会いに来てくれるだなんて問題ではなくなってくる。なかったことにしなくてはらならない! 

「これなんです。この子達、兄がこんな髭の顔になったの凄く嫌がっていたんです。ここ半年なんですよ。こんな顔にしたの。最近も剃らずにこんな顔で仕事しているのかしら」

 スマートフォンを差し出してくれたそこには、中学生ぐらいの男の子と小さな女の子が、黒いジャケット姿の彼と笑顔で写っているもの。彼の顔は美鈴と宗佑が知っている髭面の男だった。

「もうほんと、ただでさえ兄は無愛想なのに、こんな髭の顔になって……。でも面白いから写真を撮ろうと子供達がふざけて撮ったものなんです」

 もしかして、いまの兄はこんな顔でしたか?
 着物の彼女が愛らしい微笑みで聞いてくる。

「あのこの写真の男性は、お兄さん、なんですか」

 宗佑がまた唖然としながら聞いた。

 警官? 兄? じゃあ目の前の女性は妹さん? スマホの子供達は甥っ子に姪っ子?

 今度は違う涙が滲んできた。もう訳がわからなくて、じゃあ、もしかすると……、彼はもしかすると……、まだ、期待してもいい?

「はい。兄です。広島で警官をしております。私は妹の香江かえと申します」
「お兄さんは、その、独身ですか?」

 もう言葉も出ない美鈴の代わりに宗佑が色々聞いてくれる。

「独身ですよ」

 何故か妹の香江がにっこりと美鈴に微笑んだ。
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