マリンシュガーブルー
 美鈴と宗佑は戸惑う。
 警部の奥様から『家族には一切の情報を伝えない』と聞いてしまったから、姉弟一緒に気がついてしまう。

 あの人が素性を隠して捜査をする刑事だったのならば、ヤクザのふりをしていたことも隠していたはず。それを家族は知らされていない、知ってもいけない。だから妹さんは知らないだろう思うと、はっきりと兄の現状を言えずにいた。

「私も兄がどのような仕事をしているかわからず、常に案じております。兄は貴女にもそんな心配はさせたくなくて、躊躇っている。でも、本気で愛してしまったからなんとかしないとと、もがいている気がします」

 決めた。
 美鈴は彼の妹を目の前に、真っ直ぐに見据える。

「お兄様のご自宅がどこか教えてください」

 香江が驚いた顔で固まった。

「私から会いに行きます」

 彼女の笑顔が輝いた。それは宗佑もおなじだった。

「ありがとう。もう、貴女と兄が向きあわないとだめだと思って……。でも、兄のような仕事をしている男性をどう感じているのかと心配で……」

 美しい和ハンカチで彼女が滲んだ涙を拭った。兄を思う妹の気持ちが美鈴には通じてくる。

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