マリンシュガーブルー
「兄は警部補で刑事です。私の夫も、兄の先輩警察官で警部をしておりまして、県警におります。警察官の兄と夫を家族に持ちますと、彼等はまったく仕事の話はしてくれないんです。警察官の家族とはそんなものです。首を突っ込んではいけない、突っ込ませてもならない。そして一般民間人である家族が首を突っ込むことがどれだけ危ないことかも心得ております。だからなのです。兄がどこでなにをしているのか、なんの仕事をしているのかさっぱりわかりません。夫はすでにデスクワークの管理職なのでそれほど危険なところにはいないとわかっているのですが、兄はまだ現場気質の男性なので捜査であちこち配置されているからと夫から聞き、無事につつがなく捜査に参加しているとだけ伝えられても、常に案じています」

 やっとなにもかもが明かされた気がした。
 しかも『刑事』だった。
 もう美鈴も肩から力が抜けていく……。隣に座っている宗佑は逆に興奮していた。

「かっけええ。刑事だって姉ちゃん」

 だから拳銃も持っていたし? 素晴らしい腕前だったし? 場慣れしたような落ち着きと冷徹さだった? だったらどうして警察から、同業者から逃げたの?

「もしかして、兄は……。刑事に見えないような姿でこちらに来ていましたか」

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