猫と手毬


僕はその手毬をダンボールのそこからただひたすらにあげようとするけど中々上がってくれない。


ただひたすらに頭で押したり前足で蹴ったり。


そんなことをしているうちに僕は立樹に抱き抱えられる。


「そこはダメだよ。季節外れのものが多いからね。」


そう言っている立樹の腕の中から抜け出してまたダンボールの中に潜る。


違う手毬を何個か外へ放り投げて…投げたと言うより蹴ったんだけどね。


そしてやっと…外に…出せた!


その手毬は白と水色、そして薄みどりの手毬だった。


冬らしいけどなんか綺麗な緑が入っているものだった。


それを出してから僕はダンボールから出ようにも出れず、結局立樹に助けてもらった。


これが僕のおすすめだから立樹の足元に転がしてそれを拾ってもらう。


立樹はこれが僕の選んだものだと分かったみたいでお客さんに見せる。


「これがうちの看板猫さんのオススメだそうです。これは八戸のくけまりと言って青森のものなんですよ。4色の色が使われていて鮮やかですしこちらはどうでしょうか。」


よく見ると薄い黄色の糸がみどり糸の横にある。


するとお客様はその手まりを立樹の手からとってちゃんと見てから「これにします」と一言言った。


「かしこまりました。プレゼント用でしたらプレゼント用に包むことも可能ですがどうしますか?」


「お願いします。」


そしたら僕の方に近ずいてきて立樹の手よりも大きな手で僕の頭を撫でた。


「…ありがとな。猫。」


僕は猫って名前じゃないんだけどなーとか思いながらもそのままにしておく。


「猫って特別な力持ってるのか。まさか若菜にあげるのにぴったりなやつ選んでさ。」


上を向けば今まで一切変わらなかった表情が少し緩んでいて嬉しそうに見えた。


「彼女の誕生日にプレゼントしようと思ってんだけどなんも思いつかなくってな…でもあんなぴったりなもん出されたら買うしかないだろ。若菜色が入ってて暖かい黄色があってって…あいつにぴったりだ。」


最後に「なんて…猫に惚気けたらだめか」と笑った


きっとこの人はその人を大切にしているんだなって思った。


その人の話をしてる時だけなんて言うか、周りの色がふわふわしてる。


それこそぱすてるからーのように。


分かりずらい優しさが僕の頭を撫でる手からも伝わってくる。

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