猫と手毬


撫でてくれていた手を舐めて答える


こういう時猫はめんどくさい。


人間に猫語は伝わらない。


でもよかったねの意味も込めて「ニャー」と鳴いた。


「動物ってあんま関わったこと無かったけどお前みたいなやつなら部屋に居りゃいいのにって思うよ。」


最後にそう言ってプレゼント用の箱に入れられた手まりをビニール袋に入れて大切そうに持って帰っていっていた。


人間に出来て猫に出来ないことがあれば猫に出来て人間に出来ないことだって沢山あるんだろう。


例えば猫じゃなかったら立樹に抱き上げて貰えない。


「ん?藍くんどうしたの?」


こうやって足元に擦り寄ることも出来ない。


これは猫の特権だ。


そう考えたら猫も案外いいものなのかもしれない。


前足でヒラヒラとしている立樹のズボンを叩けばこーら。と窘めるような言葉が聞こえて僕は抱き上げられる。


よくよく考えればこれも猫の特権だ。


人間は子供みたいに小さくないと抱き上げてはくれない。


改めて猫で良かったなとそう思った。


今まではわかんなかったのに気付いたらそうなってた。


優しい暖かい手が抱き上げてくれる。


それがいつの間にか嬉しくなってた。


立樹は笑いながら僕のことをそっと下ろしてくれた。


「さてじゃあ看板猫くん。お仕事お疲れ様。おやつでも食べようか。」


そう言って僕にはかりかりを。


立樹は自分用にパンみたいなものとお茶を。


それぞれ食べた。


冷たい空気のなか、2人でいる時間は暖かい。


寒い冬もこれならきっと好きになれる。
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