まりあ様のおみちびき~秘密の妹は農家の天使⁉~

第3幕・夜闇の天使【訳・勘違いされちゃった】

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第3幕・夜闇の天使【訳・勘違いされちゃった】

。.:*:・'°☆

 我孤独《ひとり》佇む。刻《とき》は夕なり。
【夕日の中、私はひとり佇んでいた】
 此処は神秘なり。
【ここ、どこ?】
「かあ、かあ」
 烏哭きし黄昏。
【カラスが哭いています】
「かあ」
 …何か優雅なる貴婦人に堕天せしものあり。
【…私の日傘に何かが落ちました】
 其れ、穢れなり。
【カラスの糞尿でした】

。.:*:・'°☆

 我其れを泉で禊たもう。
【私はカラスの糞尿を蛇口で洗いました】
 我戸惑う。
【私は迷いました】
 此処人生の岐路なり。
【ここは高速道路です】
 致し方ない、宿探索す。
【仕方ない、宿でも探すか…】
 そう浮かびし雫。
【そう思った時でした】

「やめて‼やめて‼」

 何処かで野犬叫びし悲鳴と共に、男《ひと》の声せし。
【どこかで犬の鳴き声と共に、男性の声がしました】
「何者か?」
 我誰何《すいか》せし。
【私は何者か聞いた】
「助けて‼」
 救済望みし声。
【助けを求められた】
 恐れつつ近づく。
【恐れつつ近づく】

「きゃうん?」

 獣《けだもの》こちらを見し。
「おお」
 其れ犬《サモエド》なり。真白きその羽毛。
「きゅう~」
 犬《サモエド》近づきし。
「おお…」
 頭《こうべ》を撫でる。
 可憐なる雪の妖精。【可愛い】

「あ、ありがとうございます~」

 青年《おとな》、感謝せし。
 青年《おとな》、黒髪美しきぬばたま、肌青白く、農作業着を纏いし。

 我驚きし。

 其の者、まさに我が弟・奏の成長せし姿に瓜二つなり。【青年はもし弟が生きてたら、こんな感じかなぁ…というほど、よく似ていた】

「おお…」
 青年《おとな》、我の姿みて感嘆せし【引かれたか?】
「わ…」
「なに?」
青年《おとな》尋ねる。
「わ、我天より堕天せし御遣いなり、聖母《マリア》の血濡れの像のごとき紅き月に誓い、怪しき者ではない【私は都会から来ました。神に誓って不審者ではありません‼】」

 ……は‼

 失敬‼【しまった‼】

 すると、黒髪の青年《おとな》、柔和《にゅうわ》な顔つきになりし。

「おお…お待ちしておりました」

 はて?

 すると、青年《おとな》、十字架《ロザリオ》を取り出す。
 祈り始めた。
「ついにマリア様の御遣いが来られましたか。ガブリエル…でしょうか?」

 はて?

 何か誤解せし?【勘違いをしている?】
「そ、そう。我が御名ガブリエル‼」
 ついうっかり言の葉紡ぎし我。【話を合わせてしまった】
「おお…天使様。私の使命はなんですか?」
 また祈りし青年《おとな》。
「ま、先ず名を名乗れ!」
「はい。私は黒森千歳《くろもり・ちとせ》です」

…其の青年《おとな》、我の実兄なり。


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